kindleの本が全部消えた話(2) 弁護士に依頼して裁判するのは辛そう編

2022/5/27編集
- 後述のアカウント統合後にamazon.comのアカウント削除によってkindle本が全部消えるのは仕様である旨、追記

2022/6/1 変更
- 「サポートの指示によってamazon.comのアカウントを消した」のではなく「使用していないamazon.comのアカウントを閉鎖してもいいのか」という趣旨の質問を私がしたのに対して「そうですね」と回答されたということがわかったので、訂正。

変更前の記述には取り消し線を引いて、編集後の記述は強調表示しました。

NOTE: 上記変更点にもあるように、「サポートの指示によってamazon.comのアカウントを消した」という私の認識は誤っていたことがわかりました。これについてはamazon.co.jpのかたがたにメールで謝罪いたしました。

以下記事の続きです。

satoru-takeuchi.hatenablog.com

問題

  • 4月9日にkindleの本が全部消えた。その後に新たに買った本も読めないように見える。消えた本はわかっている範囲で300冊以上、総額は恐らく30-60万円程度
  • amazon prime videoやmusicなどにも(少なくともAndroidアプリからは)アクセスできなくなっている
  • 問題発生契機は、別問題の対応中にサポートの指示(上述の通り、これは記憶違いの誤りだった)に従って、かつてamazon.co.jpのアカウントと統合したamazon.comのアカウントを消したこと(「アカウント結合とは何か」「なぜ統合したのか」については後述)。この振る舞いは仕様であるとamazon.comのヘルプページに書いている
  • アカウント統合後にamazon.comのアカウントを消すとamazon.co.jpのアカウントで購入したkindle本が消えるという不具合は、amazonは組織として認識していた

前回からの変化を3行で

  • amazonのサポートとやり取り中。前回の記事で「週一の定期連絡をもらう」ということを書いたが、6週連続「進展なし」と伝えられている
  • 住んでいる市の消費生活センターに行ってきたが「ここで扱える案件ではないので弁護士に法律相談してほしい」と提案された
  • 法律事務所に相談してきたが、少なくとも弁護士に依頼して裁判するのは費用対効果が悪すぎるので辛そうだとわかった(詳細は後述)

市の消費生活センターで得たこと(5月13日に訪問)

前回の記事を書いた後、住んでいる市の消費生活センターに行きました。消費生活センターは、「消費生活センター等では、商品やサービスなど消費生活全般に関する苦情や問合せなど、消費者からの相談を専門の相談員が受け付け、公正な立場で処理にあたっています。」と国民生活センターの公式サイトにおいて説明されています。

www.kokusen.go.jp

相談員さんに事情を説明をしたところ、「ここでそのような案件は扱えないので弁護士に法律相談をしてほしい」という案内をいただきました。このセンターでは、たとえばamazonにまつわるトラブルであれば、不良品が届いたけど連絡先がわからない人に電話番号を教える、というようなことしかしていないようです。

ここでamazonに何らかの働きかけをしてくれるわけではなかったのは残念でしたが、できないものはしかたがないので、次は弁護士に相談してみることにしました。市の制度で無料で相談できる場もあったんですが、相談できる日時が限られているなど、わたしにとって諸々都合が悪かったので、法律事務所で相談することにしました(こちらは私の行ったところでは一回5500円)。

弁護士への相談で得たこと(5月20日に訪問)

ここでは本件だけではなく、今後似たようなトラブルに遭遇したときにも役立ちそうな、ためになることをたくさん伺いました。以下抜粋。

  • 本件についてamazonを訴えるのは割に合わない
    • 全額とりかえせたとしても高々数十万円程度なのに対して、裁判に訴えると初期費用が最低でも20万円かかる。さらに長期化すればどんどん必要経費が増える。裁判ではないもう少し費用のかからないやりかたもあるが、それも最低10万円から。
    • 書籍の購入額のすべてを取り返せるとは限らない。購入した本をすでに読んでいるとすると(実際、もちろん読んでいる)すでに一定の利益は既に得ているとみなされ、請求できるのはこの利益を差し引いた額になる。さらに、この額をどういう理屈でいくらにするのが妥当かを決めるのもけっこうめんどくさい
  • 裁判したとして、どれくらいの期間かかるか、および勝てるかどうかが何ともいえない
    • わたしが述べたことが事実だとすれば非はamazonにあるが、それを立証するのはけっこう大変
    • 裁判では訴えた側が証拠を積み重ねていく必要がある
    • kindle本の全滅を引き起こした誤った操作はamazonの指示(上述の通り、これは記憶違いの誤りだった)によって実施したこと」「amazonがこの操作によって発生しうる問題を事前に認識していたこと」など、わたしの訴えの正当性を裏付ける資料がわたしの手元になく、amazonの通話記録にしか残っていない(一部メールでやりとりしているので、その情報が役に立つかもしれないが、精査はしていない)
    • amazonに通話記録を出させるまでの手間がそれなりに多い。最悪出させられないこともある
  • 次の一手の候補
    • 市の消費者センターよりも一歩踏み込んだ対応をしてくれるかもしれない消費者相談用の窓口が県庁所在地にあるので、そこで相談すればわたしとamazonとの間に立ってくれるなど、なんらかの進展が期待できるかもしれない
    • 弁護士を間に入れずにわたし個人がamazonに対して裁判を起こす。書類を出すこと自体は6000円でできる。ただし大変。要所要所で弁護士さんに法律相談をして、一般論としてアドバイスをもらうことはできる

わたしは法律にまったく詳しくないので、「なるほど」とうなずくことばかりでした。この相談によって問題が解決したわけではまったくないのですが、次にとりうる手が増えたので満足です。正直なところ「これで5500円は安い!」と思いました。みなさまもこういう機会があれば一度法律相談してみると面白いと思います。

これからやること

まずは弁護士に紹介された県の窓口で相談した上で、地道にamazonのサポートに要求を続けます。正直なところサポート経由のやりとりで何か進むことはこれまでの実績から考えて期待をしていないのですが、やるしかないかなと。あと、せっかくなので自分で裁判を起こす可能性を視野に入れて情報収集をしようと思います。まだまだ道は長そうです。

おまけ: amazonのアカウント結合について

amazonのサービスは国ごとにアカウントが変わります。アカウント結合によって、amazon.co.jp(主に日本在住者が使う)とamazon.com(主に米国在住者が使う)を結び付けられます。名寄せというやつですね。詳細は以下公式サイトにおける説明を参照ください。

Amazon.comのアカウントを結合済みのお客様 https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201265640

なお現在amazonはアカウント結合を受け付けていないようです。

このアカウント統合というのが曲者で、これまでにさまざまな問題を引き起こしてきたようです。実際、前回の記事の公開前後に、わたしと同じ、または類似したトラブルに遭遇したという情報を数十件いただきました。そのうち解決したという報告は「クレームを入れまくったら消えた本の代金を返金してもらえた」という一件だけで、あとは放置しているか、あるいはサポートに連絡してもわたしと同じくまともに対応されなくて泣き寝入りだそうです。厳しい。

なぜわたしがアカウント結合をしたかについても書いておきます。かつてわたしは日本でのkindleサービス開始前にamazon.comのアカウントで米国のkindleのサービスを利用していました。日本でもしばらく後にkindleのサービスが提供されたものの、日本でのサービスを利用するためには私の場合はアカウント結合が必要でした。二つのアカウントに登録しているメールアドレスが同じ場合はこの操作が必要とかなんとか、そんな話だったかもしれませんが、なにぶん10年くらい前のことなのでうろ覚えです。共有された類似案件についても、わたしと同じ理由によってアカウント結合をしたというかたが多かったです。