チャンスをつかむということ

はじめに

「幸運の女神には前髪しかない」という言葉があります。女神(チャンス)が目の前にあらわれたときにつかんでおくべきで、過ぎ去った後に「やっぱりちょっと待って」と掴もうとしても掴むところがないのでもう遅い、というような意味です。うまいこといいますね。今日は人生において目の前のチャンスをダボハゼのようにつかみつづけてきた自分の過去の一つの経験談をもとに、チャンスについての話をします。まずは自分語りからはじめて、その後に、そこから得られた教訓について話します。

自分の過去の経験

話はわたしの最初の就職、いわゆる新卒入社についてのものです。当時大学院生だった私は色々あって「なんとしてでもLinuxカーネルの開発を仕事にする」と意気込んでいました。その動機については本筋ではないので省略します。幸運にも当時は国内サーバベンダが「Linuxサーバやるぞ!」と意気込んでいた時期でしたので、その手の仕事も存在していました。

しかし、ここで一つ大きな問題がありました。当時のわたしはコンピュータを扱う学科には在籍しておらず、材料工学を学んでいました。この状態で何も考えずに応募しても、私にをカーネル開発の能力、あるいはそれができるようになるためのポテンシャルを持っているか、面接官から見ると極めて疑わしいことは明白でした。なんとかならないかと考えていた時、友人から「インターンというものがある」と聞きました。今でこそインターンは当たり前ですが、当時は今ほど誰でも行くようなものではなく、かつ、わたしはそういうものがあることすら知らなかったのです。幸運にもわたしが受けたかった会社のLinuxを開発している部署はインターンを募集していました。

当時プログラミングの経験はあったものの、学科内にはそのような友人はおらず、コンピュータ関連の学科にも知り合いはいなかったため、自分の能力がどの程度のものかがわかりませんでした。ここも現在と違っていて、twitterなどのSNSや勉強会を通じて同志に出会うというのはなかなか困難でした。「応募したとして私には先方に求める能力があるのか」「何もできなくて大恥かいたらどうしよう」「そもそも畑違いの私が受かるのか」など、応募するかどうかは相当ためらいましたが、最終的には「自分のできることと熱意を精一杯書き連ねて応募するしかない、自分はこれをどうしてもやりたかったんだからやらない理由はない、落ちてもダメージは無い、あとは知らん」と、応募しました。

余談ですが、応募用紙には自分のできることはおろか、かなり盛ったものを書きました。当時の面接官であり、その後の上司でもあった皆様、今謝ってっておきます。すいません。

閑話休題、その後インターンに行ってみると私は幸運にも大きな成果を出し、その後無事に希望の会社、希望の部署に就職できました。つかんだチャンスを見事モノにしたというわけです。ここまでが自分語りです。

経験から得られた教訓

前節で述べたことから私が言いたいのは、「俺はできる人だ」という自慢ではなく、そういう人であっても、一歩足を踏み出してチャンスをつかまないと、そもそも勝負にならないということです。当時インターンに応募しておらず、かつ、後になって「やっぱりあきらめきれない、応募しよう」となっても、かなり困難な道が待ち受けていたでしょう。

もう一点、わたしが大きな成果を出せたのは「Linuxカーネル開発者になりたい」という思いを実現するために大学の勉強や研究そっちのけで(当時の先生方、今謝っておきます、本当に申し訳ありませんでした)関連知識を身に着けるという準備をひたすらやっていたからです。チャンスは目の前にあらわれたときにつかむだけではなく、つかんだあとに成功に結び付けるための下準備をしておく必要があるのです。

ここで「それはあなたの頭がいいからできたんでしょう?」というかたがいるでしょう。しかしながら、少なくとも私は学校の勉強と言う意味では劣等生であることが多かったです。実際材料工学を学んでいた理由も大学受験でコンピュータを扱う学科に落ちたからです。「コンピュータには適正があったからでしょう?」といわれるかもしれません。これは実際にそうだと思います。ただ、これもやってみなければわからなかったことです。やる前からあきらめるのは得策ではありません。

おわりに

チャンスを何も考えずに全部つかもうとすると大失敗してひどいめにあうこともあります。実際わたしも明らかに実力不足だったにもかかわらず無理してチャンスをつかもうとしてひどいめにあったことも多々あります。なので「チャンスは絶対つかむべき」などということは言いません。しかしながら、いったんつかんでみて、失敗してもたいしたダメージが無いのであれば、どんどんやってみていいのではないでしょうか。というのをtwitterで未踏やらセキュキャンやらGSocやらに応募するかしないかで悩んでいる学生さんなどを見て書いてみたのでした。