Linux Kernelにはバージョン名(本記事執筆時点では4.x)に加えてコードネームが存在します。Linux 4.10-rc6 Released, Now Codenamed The "Fearless Coyote"のように、記事のタイトルにコードネームを持ってきたり、コードネームが記事の中に記載されたりすることがあります。
実はこのコードネームにはほとんど意味がありません。少なくともlinuxの主要開発メーリングリストでもこれまでほとんど見たことがありません。2,3ヶ月に一度新バージョンがリリースされる現在ではコードネームがついていても覚えきれるわけがないので、使われないのは無理からぬことです。
カーネルのバイナリであるvmlinuxにもこの情報は含まれません。
$ strings vmlinux | grep "Fearless Coyote" $
そもそもLinuxのコードネームはソースディレクトリ直下のMakefileにName = <codename>
という形で定義されているだけで、他の用途に使われることは一切ありません。
$ head Makefile VERSION = 4 PATCHLEVEL = 10 SUBLEVEL = 0 EXTRAVERSION = -rc6 NAME = Fearless Coyote # ←コードネーム ... $ find | xargs grep -rnH '\$(NAME)' $
バージョン名がいたるところで使われており、かつ、vmlinuxにも情報が含まれていることに比べると大きな違いです。
ついでに言うと、過去のコードネームの一覧を見ればわかる通り、この名前はリリース毎に更新されているわけではなく、数バージョンにわたって同じものが使いまわされたりしています*1。
このためOpenStackのバージョン名"Mitaka"や"Newton"のような感覚で「君、昨日リリースされたFearless Coyoteをもう動かしてみたかね?」とかいう奴がいたら、そいつは似非カーネル通だと思います。
筆者はLinuxを使い始めて高々十数年なこともあって、過去のLinuxの歴史については詳しくありません。このため、過去にこのコードネームがいつから何のためにつけられたのかは知りません。しかし、少なくとも今現在は大した意味を持っていないことは確かです。このあたりの事情に詳しいかたがおられましたら、教えていただけると嬉しいです。