「死刑囚の記録」を読んだ

精神科医である筆者が死刑囚について書いた本です。といってもよくある彼らの人となりや犯罪そのものについては重要視されていません。収監されてから裁判を経て、死刑が確定して、やがて刑を執行されるまでにどのような精神的な変化があらわれるのかが記されています。私は本書を滅多に出会えない名著だと思いました。

切り口が面白いこともさることながら、臨場感あふれる囚人との対話の描写、および、筆者の観察眼や根気によって得られた莫大なデータに基づく見解などは見事でした。

題名に死刑囚とついていますが、本書には死刑囚だけではなく刑が確定していない囚人、死刑ではなく無期刑が確定した囚人との比較もあります。これについても一見の価値があります。